「みょうじさん、うちの応援団に入ってくれない?」 クラスのムードメーカー、桐島ユウが声をかけてきたのは体育祭の一週間前だった。みょうじナナは麦茶を飲みながら即答した。 「やだ」 「なんで!?」 「暑いから」 桐島は膝をついた。こいつとは三年間同じクラスだが、毎回この調子だ。 翌日、桐島は作戦を変えた。 「ナナ、頼む。お前が踊ると絶対優勝できる。去年の文化祭のダンス、めちゃくちゃうまかったじゃないか」 「見てたの?」 「全部」 ナナは少し黙った。 「……団長は誰?」 「俺」 「やだ」 「なんでだよ!!!」 「あんたの指示、毎回意味わからんもん。去年の借り物競走で『それっぽいもの』を持ってこいって言って、自分でカカシ持ってきたじゃない」 「あれは機転だろ!」 「審判に失格にされてたじゃない」 桐島はまた膝をついた。 体育祭当日、なぜかナナは応援団の半纏を着ていた。 「なんで来てるの、自分でも分からん」とナナはつぶやいた。 「来てくれると思ってた!」と桐島が叫んだ。 「思ってただけで何もしてないじゃない!!!」 「信じてたんだよ!」 ナナは深呼吸した。こいつの辞書に根拠という言葉はないらしい。 応援合戦が始まり、桐島の指示はやはり混乱を極めた。左右が逆、タイミングがずれ、最後の決めポーズで桐島だけ方向を間違えた。 それでも三組は二位だった。 「ナナのおかげだ!」 「あんたのせいで一位逃したんだけど」 「来年も頼む!」 「来年は受験だわ!!!」 桐島は懲りない顔で笑った。ナナはそっぽを向いたまま、半纏の袖を少しだけ引っ張った。 次回予告:桐島が文化祭の出し物で「メイド喫茶」を提案する。ナナが全力で阻止しようとする。なぜか自分がメイド服を着ることになる。