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19歳の私が出会った大人の魅力に溺れて


彼と出会ったのは、私がまだ19歳の冬だった。その時の私は何も知らない、ただの生意気な学生であり、世の中のリアルな感情や裏側を学ぶには遠すぎた場所にいたのだと思う。


彼の年齢を初めて聞いたとき、自分でも驚くほど無防備に笑ってしまったのを覚えている。「あなた、私の父親とあまり変わらない年齢じゃないですか?」なんて、失礼極まりないことを口にしたのだから。


だけど、彼はその言葉さえスルリとかわし、余裕ある笑みを浮かべながら「年齢なんて、ただの数字だろう?」と返した。その余裕、成熟した雰囲気に、私の胸はすでに高鳴っていたのかもしれない。彼の言葉のひとつひとつには力があって、鋭いのに柔らかく、私の中に知らない感情を呼び覚まそうとしていた。それは若い男の子たちには決して真似できない、大人の魅力というやつだったのだろう。


初めて彼と二人で過ごした日は、冷たい冬の雨が降っていた。薄暗いカフェの一角、彼は私の向かいで静かにコーヒーを飲みながら「君はまだ、その先の世界を見ていないだろう?」と囁いた。その言葉の意味が分からず、私は首を傾げたけれど、その声音が私を掴んで離さなかった。知らない世界を覗くかのような好奇心と、少しの恐怖――でもそれ以上に感じたのは、自分が何かに引き込まれていく予兆だった。まだその時、足を引き返すべきだったのに。


彼と過ごす時間は、私のなかの何かをどんどん変えていった。本来ならありえない。その距離感に罪悪感もあったし、何度も「これ以上は駄目だ」と自分に言い聞かせていた。けれど彼が見せる言葉の選び方、その眼差しの力強さ、そしてほんの時折垣間見える影…どれもが抗えない魅力だった。彼が「もう一杯飲んでいかないか?」と言う時、それは本当にコーヒーの話ではないと気づいていたのに。


そして、私たちの関係が一線を超えたあの夜。彼の部屋のソファに座る私の横で、彼は静かに手を伸ばし、私の髪を撫でるだけだった。その仕草さえもが優しくて、深くて、心臓が痛いほど高鳴ったのを覚えている。「君が嫌なら、やめるよ」と言った彼の声に、私は精一杯「嫌じゃない」と答えた。言葉なんていらなかった。ただその響きと仕草だけが、私の理性を溶かしていったのだから。


罪悪感はその後で訪れるものだと知った。彼が帰り際に言った「誰にも言わないで」の言葉が、まるで冷たい水を浴びせるように響いたのだ私はその言葉を胸に抱えながら、冷たい夜道を一人で歩いた。誰にも言えない秘密を抱え込んだことで、胸の高鳴りと共に何かが重く沈むのを感じる。彼の手の温かさ、低く囁く声、すべてが脳裏に焼き付いて離れなかった。それほどまでに彼の存在は私を揺さぶり、染み渡ってしまったのだ。


けれど、家に帰り静けさの中で一人きりになると、理性が押し寄せてくる。「これでいいの?」と問いかける声が止まない。彼の優しさの裏にある境界線、その危うさをわかっていながら私がそれを超えたのは、無謀で幼い衝動だったのか、それとも本当の自分の感情だったのか。答えは見つからないままだった。


あの夜以来、彼との時間は甘く、そしてますます深く化していった。彼を知れば知るほど、彼の背負うものの重さが垣間見える瞬間が増えた。その影は、私をさらに惹きつけると同時に迷いながらも私は彼の影を覗き込まずにはいられなかった。


それはまるで深い森へ迷い込むような感覚だった。奥へ進めば進むほど、戻れなくなる怖さがあったのに、それでも私はその暗闇が作り出す美しさに魅了され続けた。彼が見せた柔らかな微笑み、その裏に隠された孤独の色。その寂しげな瞳に映った私の存在が、彼を救う何かになると信じたい瞬間もあった。でも、もしかしたらそれはただの錯覚で、彼が与えてくるのは私が彼の重荷になる前提の儚い優しさだったのかもしれない。


会うたびに彼との距離が縮まり、触れるたびに私の中の何かが削られていった気がする。それは無垢な若さか、それとも罪悪感によって浸食される心のどちらか。けれど、それが痛みなのか快感なのか区別さえできなくなっていく自分に気がついた時、もう私には引き返す勇気はなかった。


ただ、彼に触れ、彼を感じるたび、その心温もりを欲していた。彼と過ごすひとときが、私の心のすべてを満たしてしまうようだった。けれど、それは同時に底知れない孤独とも隣り合わせだった。彼の手が私に触れるたび、その優しさが染み渡るたび、胸の奥底で小さな声が囁く。「これは本当に正しいの?」と。その問いは、次第に私の中で明確な形を持ち始めていた。


ある日、彼との別れ際。ふとした瞬間に見せた彼の遠い瞳。それが、私にこれ以上踏み込んではいけないと告げているように感じられた。「君には君の道がある」と彼が言った時、それは優しい口調で包まれた、残酷な現実の断言だった。私がその言葉にどれだけ抗っても、彼の背中は少しずつ遠ざかる気がした。


大人の世界に足を踏み入れた気でいた。けれど、それは単に彼の見せてくれる都合の良い一部分でしかなかったのだろう。彼が教えてくれた「大人の世界」は、甘いだけではなかった。彼の影とそれに惹きつけられていた私自身、その全てが幻想と現実の狭間にあったのだと今になってわかる。


それでも、彼が囁いた言葉の一つひとつが私の中に確かに生きている。彼の笑顔の奥にあった孤独さえ、私の中の何かを変えてしまった。その全てを胸に抱えながら、私は彼のいない日々を歩くしかない。でも、その痛みの中にある温もりを、私は生涯忘れない気がしていた。



恋愛マンガは、主に恋愛をテーマにした漫画作品で、登場人物たちの感情や関係性の変化を描いています。

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