放課後の教室には、夕陽が差し込んでいた。
カーテンがふわりと揺れて、オレンジ色の光が机の上を染める。その光の中で、私は手紙を握りしめていた。ずっと、ずっと書きたかった言葉。だけど、いざ目の前にすると、胸がドキドキしてしまう。
「……やっぱり、無理かな」
小さくつぶやくと、背後から声がした。
「何が無理なの?」
驚いて振り返ると、そこには彼――桜井先輩が立っていた。バスケ部のエースで、クラスの誰もが憧れる人。だけど、私にとっては、それ以上に特別な人。
「せ、先輩……!」
「どうしたの?手紙なんて持って」
先輩の視線が、私の手元に向かう。慌てて背中に隠そうとするけれど、彼の方がずっと背が高くて、すぐに気づかれてしまう。
「ふーん、誰宛?」
「えっ、えっと……」
言葉が詰まる。まさか「先輩へのラブレターです」なんて言えるわけがない。
先輩は少し意地悪そうに笑って、私の顔をのぞき込んだ。
「もしかして、俺?」
「っ……!」
心臓が跳ねる。どうしてそんなことを言うの? 冗談でも、そんなことを言われたら、私……。
ギュッと手紙を握りしめる。
言うなら今しかない。
「……そう、です」
勇気を振り絞って、顔を上げた。
先輩は驚いたように目を瞬かせたあと、ふっと優しく笑った。
「そっか……放課後に残っててよかった」
「え?」
次の瞬間、私の手元から手紙がそっと奪われる。
「ちゃんと読むから、待ってて」
そう言って、先輩はゆっくりと封を開けた。
心臓の音がうるさいほど響く。
窓の外では、夕陽がますます濃く染まっていった。
恋愛マンガは、主に恋愛をテーマにした漫画作品で、登場人物たちの感情や関係性の変化を描いています。
コメント
コメントを投稿