──ねえ、聞いてくれる?私、親友に彼氏を寝取られたの。
最初は些細な違和感だったのよ。彼のスマホの通知音が鳴るたび、サッと画面を伏せる仕草。デートの途中で、私がトイレに立った隙にこっそり誰かとやり取りをしている影。それでも、私は彼を信じていたし、疑う自分が嫌だった。
でも、ある夜、すべてが崩れたの。
「ねえ、今日、時間ある?」
突然、親友の彩花が私を呼び出した。大学時代からずっと一緒で、なんでも話せる大切な友達。でも、最近はどこかよそよそしくて、何かを隠しているように感じてた。
カフェに着くと、彩花は妙に落ち着かない様子で、コーヒーをかき混ぜ続けていた。
「実は……隠してたことがあるの」
ドクン、と胸が鳴る。
「私……涼太と付き合ってるの」
一瞬、頭が真っ白になった。何かの冗談だと思いたかった。でも、彩花はそんな軽い嘘をつく子じゃない。
「ごめんね……でも、彼が言ったの。最初から私のほうが好きだったって……」
……嘘でしょ?
身体が震えた。信じていた二人に裏切られた現実が、心を切り裂いていく。
「ねえ……怒らないの?」
彩花の声が震えている。
「怒る……? 怒るに決まってるじゃない……!」
涙がこぼれそうになるのを必死でこらえながら、私は立ち上がった。だけど、身体は重く、足元がふらつく。こんなの、夢であってほしかった。
でも、一番辛かったのは、彼の部屋にあった、見覚えのあるピアス。
私がクリスマスにプレゼントしたものだった。
それを、彩花がつけていた。
「どうして……?」
声にならない声で問いかけると、彩花は苦しそうな顔をして目を伏せた。
「好きになっちゃったんだもん……仕方ないよ……」
仕方ない?
そんな言葉で済まされるなら、私のこの痛みは何なの?
胸の奥が、ズキズキと痛む。涙が溢れそうになって、それでも意地で笑った。
「そう……じゃあ、もう二人で幸せになれば?」
そう言い残して、私はカフェを飛び出した。
街のネオンが滲んで、ぼやけて見える。
裏切られた。でも、それ以上に、まだ彼のことが好きな自分が許せなかった。
……ねえ、私って、バカだよね?
コメント
コメントを投稿