春の午後、私はいつもの公園のベンチに座っていた。風が優しく吹いて、少しだけ髪を揺らした。そこに、彼が現れた。私の幼馴染、悠斗。
「ねえ、彩花。やっと見つけたよ。」
彼は少し息を切らしながら、私の隣に腰を下ろした。手に持っていたのは、小さな紙袋。見慣れたお菓子屋さんのロゴが印刷されていて、私は思わず笑ってしまった。
「またチョコレート買ってきたの? 甘いもの好きすぎでしょ。」
「仕方ないじゃん。彩花が喜ぶからさ。」
彼はそう言って、ちょっと照れたように笑った。その笑顔が、なんだかいつもより眩しく見えた。
私たちは小さい頃からずっと一緒だった。学校に行くのも、帰るのも、夏休みの宿題だって一緒にやった。でも最近、悠斗を見るたびに胸がざわつく。友達のはずなのに、どこか違う気持ちが芽生えていた。
「ねえ、彩花。ちょっと聞いてほしいことがあるんだ。」
悠斗が急に真剣な声で言った。私はドキッとして、彼の顔を見上げた。
「何?」
「俺さ…ずっと前から、彩花のこと好きだったんだ。」
その言葉に、頭が真っ白になった。風が静かに通り過ぎて、彼の髪が少し揺れた。
「え…うそ、だろ?」
「嘘じゃないよ。本当だよ。」
彼はまっすぐ私の目を見て、そう言った。その瞳には、私しか映っていなかった。
「私も…実は、悠斗のこと…」
言葉がうまく出てこなくて、もごもごしていると、彼がそっと私の手を握った。温かくて、少し汗ばんだその手が、私の心を落ち着かせてくれた。
「彩花が同じ気持ちなら、俺、ほんと嬉しい。」
彼の声は少し震えていて、それでも一生懸命気持ちを伝えようとする姿に、私は涙が溢れそうになった。
そのベンチで、私たちは初めて「友達」じゃなくて「恋人」になった。彼と一緒に未来を歩いていくんだって、そう思った瞬間だった。
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