「ねえ、私たちって付き合ってるんだよね?」
彼女がそう言った。
僕はコーヒーを飲みながら考える。
「……うん、たぶん」
「たぶん?」
「だって、ほら……僕たち、デートもしてるし、手もつないだし、昨日も一緒に??」
「うんうん、それはそう。でも……」
「でも?」
「私、昨日、君の家でペンギンだったんだよね」
……そうだった。
昨日、僕の部屋にいた彼女は、完全にペンギンだった。
しゃべるペンギンとかじゃなくて、普通の、黙ったまま氷の上を滑っていそうなペンギン。
なのに、僕は特に疑問も持たず、ペンギンの彼女と一緒に映画を見て、ペンギンの彼女とピザを食べ(食べていたかは謎だが)、ペンギンの彼女を毛布で包んで寝かせた。
「それって……恋人としてどうなの?」
「うーん……ペンギンだったけど、気持ちは彼女だったよね?」
「私はそう思う。でも君は?」
「……たしかに、昨日の君はペンギンだったけど……」
「うん」
「僕の中では、彼女だったよ」
彼女はじっと僕を見つめる。
今日は人間の姿の彼女だ。
ペンギンじゃない。
「じゃあさ、私が明日ゴリラになっても、付き合ってるって言える?」
テーブルの上のコーヒーが冷えていく。
僕は考える。
「……ゴリラのレベルによる」
「レベル?」
「キングコング並みだったら、付き合ってるかどうかより、生き延びられるかの問題になるし」
「じゃあ、普通のゴリラだったら?」
「うーん……」
「例えばさ、私がゴリラになっても、君と一緒にカフェでお茶して、『最近どう?』って話せるなら、それって普通のカップルだと思わない?」
僕は想像する。
カフェの席に座る彼女。
完全にゴリラ。
でも、ストローで器用にカフェラテを飲みながら、「最近ちょっと忙しくてさ?」とか言っている。
……ありかもしれない。
「……うん、付き合ってるかも」
「でしょ?」
彼女は満足げに頷く。
今日の彼女は人間だけど、明日はどうなるかわからない。
ペンギンかもしれないし、ゴリラかもしれない。
もしかしたら、明日僕がペンギンになる可能性だってある。
それでも、僕たちは付き合っているのだろう。
たぶん。
恋愛マンガは、主に恋愛をテーマにした漫画作品で、登場人物たちの感情や関係性の変化を描いています。
https://www.amazon.co.jp/shop/influencer-316d999d/list/3319N66FHBA4E
コメント
コメントを投稿